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火災2022.03.22

環境特性に応じた火災対策~消火設備の重要性とその種類~

2020年から2021年にかけて、国内では大手半導体工場の火災が相次いで発生し、日本のみならず世界中の製造業が混乱を来した。2021年11月末には大手物流センターで放火による火災が発生し、3万㎡以上に延焼し、医薬品を含む多数の保管品が焼損したといわれている。事業の規模を問わず、工場や倉庫、商工業ビルで火災が発生すると、その損失は計り知れない。放火等の外部要因を含めた火災発生の防止、万が一火災が発生した場合の初期消火活動による被害最小化は非常に重要な課題である。今回は初期消火に欠かせない消火設備の重要性やその種類、適切な備えについて考えたい。

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法的に設置が義務づけられている消火設備の一例

消防法では施設の用途や業種、保管されている危険物の種類・量によって設置すべき消火設備を細かく定めている。たとえば作業場であれば、床面積が150㎡以上の場合消火器を設置しなければならない。さらに、木造で700㎡以上であれば屋内消火栓も必要だ。倉庫の場合も床面積が150㎡以上で消火器、木造で700㎡以上であれば屋内消火栓、天井高10mを超えるラック式倉庫の場合はスプリンクラー設備も併せて設置しなければならない。また工場および倉庫いずれの施設でも床面積が500㎡以上で自動火災報知設備の設置が義務づけられている。さらに取り扱っている危険物や可燃物の種類・量によっては消火設備の種類も細かく指定される。

法令順守だけでは必ずしも十分でないことがある

消防法では火災が発生した際に速やかに初期消火が行えるよう、細かく消火設備の設置義務を定め、各事業者は火災の予防に努めている。ところが消防法の規定を守られていたとしても、甚大な被害をもたらしてしまうことはある。2020年10月に発生したA社の半導体工場火災では、消防法を遵守し、消防設備の点検を怠っていなかった。製造工程で使用する機器も定期的にメンテナンスが行われていた。それでも9,000㎡以上が焼失し、多くの生産設備や検査装置、製品が失われてしまった。

まさに上記火災事例は、設置が義務づけられている消火設備だけでは、全ての火災を撲滅するのは難しいということを物語っている。設備や取り扱う製品の多様性もその理由のひとつである。A社の半導体工場火災ではクリーンルームが出火元であった。クリーンルームは通常の工場内とは環境が異なる。

クリーンルーム内に可燃性・引火性の液体やガス、電子機器などが保管されている現場もある。これらは危険物施設としての取扱いとはなるが、異物の混入を防ぐため気流を制御する装置が設置されていることで、火災の検知がしづらいなどの特徴もある。消防法においては、こういった気流の特殊性を想定した消火設備の設置基準は存在しない。

こういったクリーンルームでは、通常エリア以上に初期消火が重要である。取り扱っている製品や生産設備の特性に応じた消火設備を設置しなければならないのにくわえて、異物を侵入させてはならないという特性がある。消火できるかどうかという観点が重要であることは言うまでもないが、万が一の放射時も、汚損が少なく現状復帰ができる限り容易な消火薬剤であることが求められる。(クリーンルームの消火設備についてはクリーンルーム汚損の記事でさらに詳しく解説している)

このようにクリーンルームという一例からも、消防法で義務づけられる消火設備では必ずしも万全な体制とはいえないことがご理解いただけたかと思う。実際には工場や作業場、倉庫、その他の施設の数だけ、事情や状況が異なり、それぞれに即した消火設備の設置が真の火災対策を行うためには求められる。いずれも消防法によって消火設備の設置基準が設けられているものの、事情や状況によっては必ずしも十分ではないことがある。「自社特有の火災リスクと最適な消火設備について詳しく知りたい」と考えた方は火災リスク診断の記事も参考にしていただきたい。

火災を覚知したあとの初動対応を徹底するための防災訓練

消火設備がただそこにあるだけでは万全とはいえず、有効活用するための訓練があって初めて存在意義を発揮する。消防法では建物の用途や業種、規模等によって消火訓練・通報訓練・避難訓練などの防災訓練を義務づけている。これらの訓練は初期消火による被害の最小化や、迅速な避難のためには欠かせない。

火災発生後の初動対応

工場や作業場、事務所などの事業所で火災が発生した場合、一般的に以下の流れで初動対応を進める。

①周囲に火災の発生を知らせ、119番通報

火災が発生したらすぐさま周囲に火災の発生を知らせる。初期消火には多くの人出が必要となるため、できる限り人員を集める。それと同時に消防へ通報し消防車の出動を要請する。

➁初期消火活動

消火器や消火栓、補助散水栓などで初期消火活動を実施する。初期消火活動においては、常に避難経路の確保を意識しておくことが望ましい。

③煙の拡散と延焼を防ぐ

初期消火とは別に、煙の拡散や延焼を防ぐための行動も必要である。防火戸を閉めたり、排煙口を操作したりして、煙や火災の拡大を抑制する。

④初期消火に失敗した場合は直ちに避難する

目安として、初期消火対象の炎が背丈を超えた場合は、全員が直ちに避難する。避難ルートと避難場所はあらかじめ決めておく必要がある。

初動対応を徹底するためには防災訓練と組織作りが必須

前項で説明したような適切な初動対応を火災時に行うには、日頃から自衛消防隊を構築した上で訓練を積み重ねておかなければ難しい。消火器や消火栓、排煙口の操作に加えて、時間が無い中での連携が求められるからだ。あらかじめ責任者を定めた上で、責任者の指示のもと、すべての従業員が自身の役割を理解して能動的に動く必要がある。事業所で火災が発生した際の被害を最小限に抑えるためにも防災訓練は欠かせない。また防災訓練は消防法で実施が義務づけられている。従業員の命や事業所の財産を守るためにも、必ず防災訓練は実施しておこう。

知っておきたい消火設備の種類

設置場所の環境によって、効果的な消火薬剤は様々である。ここでは消火設備の種類について、水・泡・粉末・ガスといった消火薬剤の種類別に解説する。

法令上必要となる消火設備

水消火設備

水消火設備とは水を消火薬剤として用いた消火設備だ。代表的なものが消火栓設備やスプリンクラー設備である。いずれも大量の水を放出することで冷却効果により消火を図る。屋内消火栓は、一定の規模以上の工場や作業場、ショッピングセンターや病院など様々な施設への設置が義務づけられている。

泡消火設備

泡消火薬剤は可燃性液体が保管、使用されているエリアの消火に適した消火薬剤だ。泡で可燃物を覆い尽くすことによる「窒息効果」と、泡によって対象物を冷却する「冷却効果」によって消火する。駐車場やガソリンスタンドなど、引火性液体を貯蔵・使用している施設に向いている。

粉末消火設備

粉末消火設備は、燃焼という化学変化を抑制する負触媒効果に優れており、電気も通さないことから、対象物を問わず万能な効果を発揮する。一方で、表面上は消火できたとしても、深部に火種が残った場合、再燃してしまう恐れがある。また、放射後の汚損により設備等の復旧に時間がかかるという二次被害のリスクも潜在している。

ガス系消火設備

水や泡、粉末などと異なり、放射後の残留物がほとんど無いため、汚損のリスクが低い。ただし、酸素濃度を低下させる為、ガス放出前には退避が必要になるなど、使用上の注意が必要である。

消防法プラスアルファの対策について

消火器

似たような外観の消火器であっても、中身の消火薬剤は様々である。粉末消火器を設置することで、法令は十分クリアできることから、多くの施設で粉末消火器が採用されている。しかし、設置場所の特性を考慮した機器選定を行いたい。当社のピュアウォーター消火器は、純水を使用しており、残留物がほとんどなくクリーンルームや電子機器を多く取り扱う工場、事務所に適している。狭い空間に設置できない等の制限はあるが、より残留物の少ない二酸化炭素消火器も効果的である。また、有機溶剤や可燃性液体を取り扱う工程の付近では、油火災に抜群の消火力を発揮し、粉末よりも汚損が少ない機械泡消火器も検討したい。

自動消火装置

半導体製造装置や工作機械等の生産設備を対象に、火災の早期検知と消火薬剤の放射を行う自動消火装置の一例として、当社製品である「キャビネックス」がある。「キャビネックス」は、消火薬剤に二酸化炭素を採用しており、放射後の機器や製品への汚損を極小化できる。法令上設置義務があるものではないが、早期復旧が求められる生産ラインや、高額な生産設備に自主的にかつ、個別設置するものである。仮に、火災リスクが潜在する生産設備にキャビネックスを設置せず工場火災に至った場合の損害コストと、キャビネックス導入コストを比較した場合、後者が費用対効果の観点で有利であると言えよう。

まとめ

初期消火を成功させ、延焼を防止するためには事業所の特性に応じた消火設備を設置する必要がある。また消火設備を用いて適切に初期消火を行える体制の構築も欠かせない。消防法で規定された消火設備では、特有の火災リスクに対応できないこともあるため、それぞれに合った最適な対策が求められる。当社では多種多様な消火設備を取り扱っていると同時に、火災発生リスク簡易無料診断サービスも提供している。独自の火災対策についてお悩みの方は、ぜひ当社にご相談いただきたい。

関連リンク

◆初田製作所  製品ページ『ピュアウォーター消火器』

◆初田製作所  製品ページ『二酸化炭素消火器』

◆初田製作所  製品ページ『機械泡消火器』

◆初田製作所  製品ページ『半導体・工作機向け二酸化炭素自動消火装置「キャビネックス」』

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