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2020年10月に発生したA社の半導体製造工場での火災は、発生から鎮火までに4日を要した。間接的な損失を含めた損害額は200億円を越えている。半導体製造工場でひとたび火災が発生すると、鎮火が難しく製造機器や製品等が焼失するため経営への影響は甚大である。今回は実際の半導体工場火災の事例をもとに、予防・早期検知の重要性について考えていきたい。
目次
本記事では半導体工場の火災リスクについてまとめるが、事業所の総合的な火災リスクを検証する際は、第3者目線でリスクの洗い出しをおこなうのもおすすめである。
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まずは近年発生した半導体工場火災の発生事例を確認しておこう。いずれも自社内のみならず、世界経済が鈍化するほどのインパクトである。
A社の半導体工場において火災が発生したのは2020年10月である。半導体の材料となるウエハーを製造する装置から出火したと推定されている。A社がこの火災で受けた損害は200億円を越えると推定されている。その影響はA社のみならず世界中に波及。火災から1年が経過した2021年11月時点では、当該半導体工場の復旧を断念したと報じられている。クリーンルームの損傷が激しいとのこと。
B社の半導体工場火災は、クリーンルーム内にあるメッキ装置付近で発生した。A社の火災により、自動車業界が半導体不足にあえいでいた中で、さらにA社の半導体工場で火災が発生。火災発生から、工場設備の現場の完全復旧に要した日数は3ヶ月を越える。
A社が事故後に公表した事故報告書をもとに、半導体工場の火災リスクについて考えていきたい。
A社の報告書によれば、工場内は消防法の基準を満たした消防設備が設置されていた。すべての消防設備の設置を義務づけているのはなく、用途や延べ床面積等によってその種類は細かく規定されている。
たとえば延べ面積が500㎡の平屋工場であれば、自動火災報知設備の設置が義務づけられている。自動火災報知設備とは、熱や煙を感知器が検知することで受信機に火災信号が送られ、非常ベルや音声によって建物内へ火災発生を知らせる設備のことだ。
A社では、上記の法規制に則り、自動火災報知設備は導入していた。A社が導入していたのは、光電式煙感知器である。これは光センサーで煙粒子を検知して火災の発生を検知する仕組みだ。この煙感知器が早期に煙を検知していれば、大きな延焼は阻止できたかもしれない。しかしながら、煙の検知が遅れ、結果的に大規模火災に発展した。
その理由は、クリーンルーム特有の気流制御にある。A社のクリーンルームでは、埃や塵を取り除くため、天井の送風ユニット等によりダウンフロー気流を生成していた。床はグレーチングであった。天井の送風ユニットで送風した空気はフィルタにて清浄化されて、床下に流れる仕組みである。
この仕組みが煙感知器の検知を遅らせる要因となった。通常は発火して煙が生じたら天井面に広がるため煙感知器で早期検知が可能であった。しかしながら、A社のクリーンルーム内では、天井の送風ユニットが煙を床へ送風してしまった。したがって、発火して生じた煙粒子は室内に滞留しなかったため煙感知器では早期検知できなかったのだ。
これはA社固有の問題ではない。半導体工場のみならず、クリーンルームを有する工場全体が抱えるリスクである。
続いて半導体工場火災の主な原因と出火防止策について考えたい。
半導体工場火災の原因は、確定できない事例もある。B社の火災は出火元は判明しているものの原因は明らかではない。A社の火災については、接触不良や半断線によるものとみられている。また出火の原因となった装置が仕様書とは異なる素材を使用していたことから、延焼したとも推定されている。さらにクリーンルーム内の気流循環により、熱風が短時間で室内を循環し、室内の温度が急激に上昇した。これによりさらなる延焼を引き起こしたとの推定もある。
他の半導体工場火災の事例をみると、配電盤の電気回路において、過電流が流れて配線がショートして出火したものや、静電スパーク、絶縁劣化など電気設備もしくは機器に起因するものが火災原因の代表例としてあげられる。
次に半導体工場において、出火を防ぐ方法について検討したい。
半導体工場火災の発生時間は、作業時間中に発生する火災が半数を超えるが、作業中以外の時間帯にも発生するケースも少なからず存在し、作業工程の見直しだけでは予防は難しいと考えられる。
一方で製造装置やその周辺機器の定期的なメンテナンスによって、防げる火災が少なからず存在する。先述した過電流によるショートや静電スパーク、絶縁劣化などは機器のメンテナンスによって予防可能だ。また仕様書通りの装置を導入し、正しく運用することも出火を防ぐのに一役買うだろう。
半導体工場の火災は、たとえ火災対策を実施している大手企業であっても発生しうる。作業工程の見直しや機器のメンテナンスなどを行ったとしても、出火のリスクを0にすることは難しい。出火を予防するための対策を講じると同時に、万が一出火してしまった際の早期検知が重要となる。一般の建物では、煙感知器が早期検知の役割を果たすが、気流制御により煙の検知が難しい半導体工場でも有用な早期検知が可能なセンサーを紹介したい。
このセンサーは、一般的な煙感知器の50倍の感度を持つ。装置内ケーブルなどの電気火災の場合、発煙前のケーブルが軟化するときに発生する透明なベーパー(可塑剤等)を検知するため、一般的な感知器に比べてより早い段階で火災発生を検知することができる。また、小型の吸引ファンを内蔵し気流の速いところでも希釈された煙粒子を検知できるため、気流制御されたクリーンルーム等でも有効である。
SGセンサーは火災発生初期のケーブルなどの燃焼によって生じた、一酸化炭素を選択的に検知するセンサーである。アルコールや溶剤等から発生される可燃性ガスも捉えられるため、半導体工場であっても多角的に火災の発生を検知できる。
3波長赤外線式炎センサーは、炎が発する3つの波長の赤外線をキャッチして炎を検知するセンサーである。炎特有のスペクトルパターンをセンサー内のCPU(中央処理装置)で演算処理するため、検知の速度と確度が高い。サイズがコンパクトであるため従来であればセンサーの設置が難しかったエリアにも設置可能だ。
半導体工場での火災はひとたび発生すると、現場の復旧や製造装置の刷新などにより企業に甚大な損失をもたらす。しかしながら扱っている製品や装置によっては完全に出火を予防することは難しい。またクリーンルームの特性上、従来の煙感知器では早期検知が難しいことも延焼を引き起こす原因となる。したがって半導体工場においては、より早い段階で検知ができるセンサーや確度が高いセンサーを用いて火災の早期検知と、確実な消火が求められる。
当社では早期検知が可能なセンサーを取り扱っているだけでなく、火災発生リスクを無料で診断するサービスを提供している。火災発生リスクを知るとともに、早期検知システムの導入を検討している場合はぜひご相談いただきたい。
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