【防火のプロが解説】物流倉庫で起こった5つの火災事例から見える、物流倉庫での火災対策
物流倉庫は、大量の可燃物や梱包材が集積される場所であり、一度火災が発生すれば甚大な被害につながる可能性があります。本記事では、過去に国内で発生した主要な火災事例を紐解きながら、物流倉庫における防火のポイントを専門家の視点で解説します。
物流倉庫における火災の現状とリスク
消防庁の統計によると、飲食店での火災件数は1年間で513件(令和6年(1~12月)における火災の状況(確定値)より-総務省消防庁)。1日に約1.4件火災が発生していることになり、今日もどこかで物流倉庫において火災が発生しているといえます。
物流倉庫での火災は、保管している物品や建物の構造上、大きな被害になる可能性があります。
1.延焼しやすい可燃物:段ボールやプラスチックパレット、緩衝材など、火が回りやすい可燃物が密集しています。
2.消火の困難さ:高層ラックが立ち並ぶ空間では、スプリンクラーの散水が遮られやすく、煙も充満しやすい構造です。また窓の少なさや小ささが障壁となり、火災発生時に外からの消火が困難になる可能性があります。
3.経済的損失の大きさ:自社だけでなくお客様の荷物を保管している性質上、火災が発生すると荷主への損害賠償、サプライチェーンの寸断、そして企業の社会的信頼の失墜につながります。
過去の教訓を学ぶことは、未来の被害を防ぐための第一歩です。それでは、実際に起きた5つの事例を見ていきましょう。
物流倉庫で発生した火災事例5選
物流倉庫での火災事例をご紹介します。なお、火災原因などは調査中のものも含んでおります。
1.フォークリフトから着火し、鎮火に12日かかった大規模火災
・発生場所:埼玉県三芳町の大規模物流センター
・発生時期:2017年2月
・火災の原因:フォークリフト作業場において、段ボールなどがフォークリフトのエンジン部分に入り込み、高温の排気管に触れて着火した
・被害:2名負傷、焼損床面積約45,000m²
・問題点:
- 屋外消火栓を試みたが、ポンプ起動ボタンを押さなかったため適切に使用できなかった
- 正常に作動しない防火シャッターが複数あった(133のシャッターのうち、84ものシャッターが不作動、完全閉鎖できないといわれている)
- 排気段ボールの集積所であり、可燃物が多い環境での出火だった
建物の総延床面積約72,126㎡のうち約45,000m²(60%超)が焼損し、鎮火までに2週間弱を要しました。建物は大規模倉庫で窓・開口部が少なく、収容物が多いため内部進入が困難であり、人命を第一に消火活動を進めたためです。その後建設会社に外壁を解体してもらうことで開口部を確保し、有効な注水にいたりました。
日頃の従業員への防火教育、自衛消防組織の重要性を再認識させる、大規模火災です。
2.コンセントにたまったホコリから出火
・発生場所:愛知県蟹江町の物流倉庫
・発生時期:2014年11月
・火災の原因:フォークリフトを充電するコンセントの付近にほこりがたまっていた可能性
・被害:鉄骨スレート葺き5階建て倉庫が全焼(延べ床面積約20,000㎡)
・問題点:コンセントにホコリが堆積し、トラッキング現象が発生した可能性⇒5S管理不足
建物が全焼し、鎮火に約45時間を要しました。こちらの倉庫も開口部が少なく、当初消防による直接注水ができませんでした。倉庫にはスナック菓子や段ボール箱詰めのポリ袋などの可燃物が保管されていました。樹脂が多く燃えたため、火災の熱で溶けて再度固まり、熱を持った樹脂が再燃したことで、鎮火後も残火処理が続きました。
トラッキング現象とは、コンセントとプラグのすき間にほこりがたまることで回路を形成し、発火につながる現象です。倉庫だけでなく一般家庭でも起こり得る火災原因の一つです。トラッキング火災を防ぐためには、日常清掃やコンセントキャップなどの対策が有効です。

3.外部業者の工事作業中に出火
・発生場所:東京都大田区の物流センター
・発生時期:2019年2月
・火災の原因:外部業者による配管の溶接作業中に出火
・被害:3名死亡、1名負傷、約1,000㎡の焼損
・問題点:溶接機の電流が想定していない経路を流れる「迷走電流」が発生し、電気ケーブルのチューブが過熱したことで周辺のウレタンに引火⇒外部業者の作業不備
自社の防火管理だけでなく、外部業者の適切な選定も火災対策には必須です。この火災事例では、外部業者の作業不備により火災が発生し、3名の方がお亡くなりになりました。「迷走電流」が発生する原因として、溶接時にケーブルが正しく接続されていないことがあげられます。
信頼・実績のある外部業者を選定し、加えて外部業者による火気作業中は、安全を確認するために自社の担当者が現場立ち会いをすることが大切です。
4.放火による火災
・発生場所:大阪府大阪市の物流倉庫
・発生時期:2021年11月
・火災の原因:段ボールパレットに火をつけたことによる放火
・被害:延べ床面積53,000㎡のうち、38,700㎡が焼損
・問題点:薬品などの危険物や医療機器が多く保管されていた
当該倉庫で働いていた元派遣社員の放火により、火災が発生しました。この火災で少なくとも約80億円の損害が生じています。放火自体を防ぐことは難しいかもしれませんが、火をつけられた後、迅速に火災検知する仕組みを講じることは重要です。特に「放火・放火の疑い」は火災原因の上位を占めており、令和6年の火災発生件数は3,904件です。放火では屋外の放置されている可燃物に火をつけられることが多いです。そのため屋外での火災を検知する仕組みとして、火災検知と不審者検知の両方が可能なAIカメラの設置をおすすめします。

全火災37,141 件の出火原因別件数の内訳
引用:令和6年(1~12月)における火災の状況(確定値)より-総務省消防庁
5.化学物質を取りあつかう倉庫からの出火
・発生場所:静岡県吉田町の工場内倉庫
・発生時期:2020年7月
・火災の原因:①電気系統のトラブルに起因する発火 ②化学物質反応に起因する発火
・被害:4名死亡、4名負傷、鉄骨2階建ての工場兼倉庫が焼損
・問題点:危険予知の不足や、リスクアセスメント能力の欠如
当該工場兼倉庫では、家庭用洗剤などを取り扱うため、化学薬品の原材料や副資材、メラミン製スポンジなどを保管していました。鎮火までに約30時間を要し、消火活動中に消防隊員と警察官がお亡くなりになりました。
火災の要因は特定には至りませんでしたが、単独要因または複合的要因の可能性があります。
・可能性① 電気系統のトラブル:爆発的燃焼発生まで工場内は通電状態であり、電気機器の発熱や、100mA未満の漏電によるトラッキング着火の可能性
・可能性② 化学物質の反応:保管されていた過炭酸ナトリウム(SPC)およびその組成物は、加水されると発熱反応が生じる可能性
事例から学ぶ、物流倉庫に必要な5つの火災対策
事例を振り返ると、共通する課題が見えてきます。これらを防ぐために、以下の対策を推奨します。特に延床面積が10,000㎡以上の大規模倉庫には、「大規模倉庫における効果的な防火管理に関するガイドライン」をふまえ、防火安全対策を実施しましょう。
1. 防火シャッターや防火戸の動作確認
防火シャッターや防火戸は火災を区画内に封じ込める最後の砦です。
- シャッターの降下ラインや、防火戸閉鎖ライン上に荷物を絶対に置かない(黄色のライン引きの徹底)
- 感知器連動の動作確認を定期的に行う
2. 電気設備の点検と清掃
フォークリフトやコンセントなどの電気設備による火災は、清掃不足(ほこりの堆積)が原因であることがほとんどです。近年では、マテハン機器(自動化機器)の発展により、電気設備の複雑化や倉庫内が無人になることがあり、火災が発生しても覚知に時間がかかる場合があります。
- フォークリフトなどの充電スペースの周辺に可燃物を置かない
- 配電盤、コンセントなどの電気設備まわりの定期的な清掃
3. 工事・メンテナンス時の火気管理
「外部業者だから安心」ではなく、自社の担当者が立ち会う体制が必要です。
- 適切な外部業者の選定
- 溶接作業など火気作業中において立会いを徹底する
4. 自衛消防組織の訓練
大規模倉庫では、初期消火が間に合わない場合が多々あります。
- 「誰が初期消火をするのか」「誰が119番通報するのか」「責任者が不在の場合はどうするか」をロールプレイング形式で訓練する。
- 夜間・休日の無人時間帯における異常検知システム(AIカメラ等)の導入。
まとめ
物流倉庫の火災は、一つの企業の損失にとどまらず、社会インフラを麻痺させる大きなインパクトを持ちます。今回紹介した火災事例は、どれも特別なことではなく、どの倉庫でも起こり得る日常的なリスクです。
「うちは大丈夫だろう」という慢心こそが最大の火種です。本記事を参考に、自社の現場を改めて見直してみてください。防火対策への投資は、単なるコストではなく、企業の事業継続(BCP)における最優先の戦略投資なのです。
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