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火災2025.06.20

安全対策の鍵とは?大規模倉庫の火災リスクと防火管理のガイドラインについて解説します!

近年、大規模倉庫における火災リスクは多様化・複雑化しています。人手不足やインターネット通販の拡大による物流効率化、倉庫の大規模化、ロボット技術の導入による自動化の進展などがその背景にあります。こうした変化は、従来の防火管理体制では対応しきれない新たな課題を生み出しています。そこで本記事では、総務省消防庁が策定した「大規模倉庫における効果的な防火管理に関するガイドライン」における主要なポイントを解説し、倉庫における火災リスク低減に役立つ情報をご紹介します!
なお大規模倉庫向けのガイドラインとなっていますが、倉庫以外でも活用できる情報もございます。ぜひ参考にしていただき、火災リスクを低減しましょう。

ガイドライン策定の背景と目的

総務省消防庁が発表した「大規模倉庫における効果的な防火管理に関するガイドライン」は、過去に発生した大規模倉庫火災の教訓から策定されました。特に平成29年の埼玉県三芳町での倉庫火災では、防火シャッターの機能不全による延焼拡大が課題となりました。これを受け、消防庁は既にハード面に関する「大規模倉庫における消防活動支援対策ガイドライン」を通知していましたが、近年の倉庫が持つ多様な特徴を踏まえ、主に防火管理のソフト面を強化する目的で、本ガイドラインが新たにまとめられました。

大規模倉庫の管理権原者には、消防法第8条の規定に基づき、火気管理、消防用設備等の維持管理、自衛消防組織の整備、従業員教育、定期的な訓練、そして火災発生時の消火活動、通報連絡、避難誘導といった防火管理上の責任を果たすことが求められています。これらの内容をもとに消防計画を作成したり、教育・訓練へ活用したりしましょう。

消防計画については、下記にて詳しく解説しています。ぜひご覧ください。

消防計画とは?必要な手続き、消防計画で定めるべき内容や作成手順について詳しく解説!

ガイドラインの主な対象

このガイドラインは、倉庫の用途に供する部分の床面積の合計が10,000㎡以上となる大規模倉庫を主な対象としています。しかしこの規模に満たない倉庫や、他の用途の建物であっても本ガイドラインで示される火災リスクがある場合、その内容を参考に安全性の向上を図ることが推奨されています。

大規模倉庫の火災リスク:多様化する要因

大規模倉庫における、近年の特徴や想定されるリスクは下記になります。こちらの情報を参考にしていただき、消防計画、避難訓練などの策定を行いましょう。

1.建物利用者の増加・多様化

【特徴】
福利厚生施設の併設や加工業務の一体化により、建物利用者が増加している。
アルバイト、短期間労働者、外国人労働者など、従業員の属性が多様化している。
【火災リスク】
避難に時間がかかるおそれがある。
託児所など避難に支援を必要とする方、建物に不慣れな方、日本語の理解が不十分な方がいる場合は、さらに避難に時間を要する可能性がある。

2.管理権原者の複数存在

【特徴】
マルチテナント型の倉庫や福利厚生施設が併設された倉庫では、同一建物内に複数の管理権原者が存在する。
【火災リスク】
建物内でテナントごとに管理権原が分かれている場合、迅速かつ的確な応急対策が困難になる可能性がある。

3.保管物品の多種多様化

【特徴】
倉庫内に保管される物品が多種多様になっている。
【火災リスク】
保管物品が適切に管理されていない場合、火災発生・延焼拡大の危険性が生じる可能性がある。
消防隊へ危険物等の保管状況などの情報提供がない場合、消防隊による消火活動が困難になる。

4.庫内作業の自動化

【特徴】
物品の仕分けや搬送を行うマテハン機器(マテリアルハンドリング機器)の自動化やロボット技術の導入が進んでいる。
【火災リスク】
マテハン機器の配置によっては、防火区画形成の障害となるおそれがある。
高密度保管により急速に延焼拡大し、消火が困難になる可能性がある。
避難動線の複雑化による逃げ遅れや、人が立ち入らないエリアでの火災発見の遅れが発生する可能性がある。
マテハン機器の増設・変更によりレイアウトが異なる場合、消防用設備等の機能に支障が生じる可能性がある。

大規模倉庫における効果的な防火管理のポイント

大規模倉庫における防火管理の5つのポイントを抜粋し、下記に示します。ぜひ参考にしていただき、個々の倉庫にあわせた対応をしましょう。

1.平時の火災予防

【電気関係】
・コンセント周りの清掃
・テーブルタップの定格容量の順守(たこ足配線)
・照明器具や配線に接近して荷物を積み上げない
・リチウムイオン電池を搭載した機器の取り扱いに注意
・各種機器の定期的なメンテナンス

【工事関係】
・火花の飛散する範囲内に保管物品を置かない
・移動できない保管物品には不燃材のカバーをかけるなどの措置を行う

【可燃物管理】
・廃材は整理整頓し、集積方法を定める

【危険物管理】
・保管物品が、消防法上の危険物に該当していないかを確認する
・倉庫内のどこに、何が、どれくらいあるかを適切に管理し、消防隊への情報提供体制を構築する

【レイアウト変更等への対応】
・レイアウト変更がある場合、事前に消防機関に相談し、必要に応じて届出を行う

2.火災の覚知と情報共有

・防災センター等と連携体制を構築し、事前に消防計画を策定する
・人が立ち入らないエリアについては、巡回の実施や防災センターへの共有方法を構築する

3.初期消火・延焼拡大防止

・従業員全員が、消火器だけでなく消火設備の設置場所や操作方法を把握する
・夜間など人員が少ない時間帯でも確実に初期消火ができるような体制を構築する

4.避難安全

・避難動線の確保
・人員配置等に応じた避難計画、訓練・教育の実施

5.消防活動支援

・消防機関との連携

なお倉庫に対して自衛消防組織の編成義務はありませんが、大規模倉庫では従業員等が多数いることが多いため、自主的な設置をおすすめします。
自衛消防組織については、下記にて詳しく解説しています。ぜひご覧ください。

【防災担当者必見】自衛消防組織のすべて!設置義務から編成、活動内容まで徹底解説します

火災リスク、見過ごしていませんか?

上記のような火災リスクはどの倉庫、事業所でも見受けられます。しかし、“慣れ”や“固定観念”などによりすべてを把握することは難しいものです。そこで、初田製作所が提供している火災発生リスク診断サービスをおすすめします。

【火災リスク診断サービスの特長】
・第三者目線による、日頃気づかない火災発生リスクの「見える化」
・従業員の皆様と様々なリスク情報を共有でき、防災意識のボトムアップを支援
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消防設備士資格を取得した防災のプロが現地へ訪問し、上記のような火災リスク箇所を1つ1つ洗い出します。消防設備点検とは目的が異なり、火災発生リスク診断サービスは火災を起こさないという「火災発生前」に重きを置いています。ぜひ一度火災リスク診断を受けてみてはいかがでしょうか。ご相談やお問い合わせはこちら

 まとめ

上記でご紹介した項目は、大規模倉庫における効果的な防火管理のほんの一部です。防火管理は一度実施すれば終わりというものでなく、常に変化するリスクに対応し、継続的に改善していくプロセスです。大規模倉庫における防火管理は、単に消防法を遵守するだけでなく、倉庫の特性や利用状況に応じたきめ細やかな対策が不可欠です。電気設備の点検、防火区画の維持、適切な避難経路の確保、そして緊急時の迅速な情報共有体制の構築など、多岐にわたる側面から包括的に取り組む必要があります。

「自身の倉庫はガイドラインに沿っているだろうか?」「見落としている火災リスクはないか?」といったご不安をお持ちの管理権原者様もいらっしゃるかもしれません。そうした際には、ぜひ当社の「火災リスク診断サービス」をご活用ください。長年培ってきた総合防災メーカーとしての専門知識と経験に基づき、お客様の倉庫の現状に即した潜在的な火災リスクを洗い出し、最適な防火管理体制の強化をサポートいたします。お困りごとなどございましたら、お気軽にお問い合わせください。

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