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火災発生時、火災の延焼や煙の流入を防止するために建築物の内外の開口部等に設置される設備が「防火設備」である。この防火設備には「防火戸」や「防火シャッター」等、多くの人が一度は聞いたことがあると思われる設備がある。本記事では「防火戸」に着目し、過去の火災事例も交えながらその必要性についてお伝えしたい。
防火戸の話をする前に、「防火区画」について少し触れておきたい。建築基準法施行令第112条に定められた、火災時に炎や煙が拡散しないように燃えにくい壁や鉄製の戸(防火戸)や防火シャッター等で区切られた単位(部屋)のことを防火区画という。火災時の被害を最小限にくいとめるためのとても重要な役割を果たすと言って良い。防火区画にも種類があるが、ここでは代表的な区画2種を紹介したい。
①面積区画 >> 一定の床面積で区切られた防火単位。水平方向に延焼しないように面積区画が設けられている。
②竪穴区画 >> 階段やダクト等の竪穴を通じて、他階へ延焼や煙の流入を防ぐための区画。
煙は水平方向(横方向)に毎秒0.5m~1m、垂直方向(縦方向)に毎秒3m~5mの速さで広がる。垂直方向へは水平方向に比べて3~5倍ほどの速さで広がるため、上階への煙流入の抑制や避難経路確保といった観点からも竪穴区画にはより厳しい基準が設けられている。防火戸はその区画を形成するためのもの、いわば防火区画の一部である。
防火戸は防火扉とも呼ばれ、以下の2種類に性能が分かれる。
2001年に発生した新宿歌舞伎町ビル火災では44人もの尊い命が失われてしまったが、その要因の一つが「防火戸の管理不備」であった。事後の検証結果から、階段室に備わっていた常時開放型防火戸(火災時に煙感知器との連動で閉鎖)の前に多量のモノが障害物となってしまい、本来閉鎖するはずの防火戸が閉鎖されなかったのである。それにより室内に流れ込んできた不完全燃焼に伴う一酸化炭素を含んだ煙を吸ってしまい、意識不明となり命を落としてしまった。この火災の出火原因については放火と推定されているが、生命線である唯一の屋内避難階段に多くの可燃物が日常的に置かれていたことで引き起こされた延焼の速さ、避難障害、そして防火戸機能不全。防火管理の不備が結果的にここまで多くの犠牲者を出してしまった。
避難経路に関する記事はこちら→「事業所において確保すべき通路幅とは?」
この火災を機に、消防法改正等の大きな社会的な動きがあったが、最終的に人命を守るのは法律ではなく、やはり人それぞれの強い意識に他ならないと考える。
上記から言えることは、火災時に防火戸が機能しないことは甚大な被害に繋がる可能性が高いということだ。弊社では火災リスク診断サービスを2014年から開始し、様々な業種の工場を数多く訪れてきた。防火戸の役割をしっかりと把握し、適切な管理を日頃から行っている工場もあれば、防火戸の存在と気づかず(または知らず)にドアトッパーを挟み込んで開放状態にしていたり、防火戸の前に障害物が置かれていて扉が開かない状態になっていたりと管理が行き届ていない多くの工場事例を目にしてきた。火災対策というのは、火災を起こさないための予防策や、火災発生後の初期消火対策だけに留まらない。その先の避難についても真剣に考えていく必要がある。火災リスク診断サービスはこれら総合的なリスクを事前に洗い出し、最適な改善アドバイスを行うことで長年多くのお客様から支持を得てきた。第三者の目線による気づきは多いものだ。興味ある方はこちらの記事(記事:火災リスク診断について)も併せてぜひ一読いただきたい。
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